回向

 ごきげんよう。本田陽彦です。

 

 先日、吟道の大先輩がまた一人、旅立ってゆかれました。

 

 私が吟の道に入ったときから、弟と二人、本当に慈しんでいただきました。孫のように可愛がっていただき、「てるひこくん、やっちゃん」とお会いするたびに握手をしてくださった、大きく包み込む手の感触を思い出します。

 

 人生は夢のごとく、また煙のごとし。

 

 葬儀では追悼の吟を師匠と共に捧げました。師は「あなたが可愛がっていた、陽彦と恭裕もここにおります」と先輩に涙を流しながらお声をおかけになりました。

 

 詩吟が大好きで、とてもお上手な方でした。紋付袴で凛々しくお立ちになっているお写真からは、私たちの吟を聴いて「精進しなさい」と語りかけていらっしゃるように感じられました。

 私たちが出会ったときには光を失っていらっしゃいましたが、肉体を離れた今、大きくなった私たちの姿を見ていただけたでしょうか。おかげさまで、こんなに大きくなりました。弟と二人、刀をお借りして舞った城山、懐かしいです・・・

 

 人間として生まれて、このように素晴らしい方々とご縁をいただけたことに、心から感謝いたします。厳格ながらも柔和であり、皆に慈しみのお心を向けていらっしゃったお姿に尊敬合掌いたします。

 

 私の積んだ功徳を、今生を終えられた大先輩に回向いたします。回向、回向、回向・・・

 

 私も命根の尽きるときまで、正しく精進いたします。

 

 健やかで、危険がなく、心安らかに、幸せであれかし!